第5話 さらにディープにトルコに触れる

9月20日(日)
今日も朝早く目が覚める。今日はいよいよバイラムの日だ。朝早くから出掛けるのかと思いきや、男たちだけ。近くのモスクに礼拝に出かけていってしまった。窓を開けて早朝の田舎のしんとした澄んだ空気を味わう。
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窓からのぞいた隣の家。

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コンクリートむきだしの壁にごつい木枠の窓やドアがついている。カーテンもかわいい。

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昨日はじめに案内された部屋。シンプルですごく素敵。

 男たちが帰ってきてしばらくすると朝ごはん。昨日のその広い部屋のまんなかに布を敷いて料理が広げられ、みんなで囲んで座っていただく。トマトときゅうりのサラダ、自家製の塩漬けオリーブ、ツナ、薄い皮のようなエキメキ、やぎのチーズを巻き込んだ自家製のエキメキ、藍子用にと卵、これも裏のにわとりの卵だとかで味が濃厚。そしてはちみつは巣ごと!かたまりをスプーンでごそっとすくって皮のようなエキメキでくるんで食べる。自家製オリーブは香りがよくて、ツナと一緒にエキメキでくるむとまたおいしいのだが、アリさんはこれはちょっと塩がきついですねと言っていた。あれやこれやと組み合わせをかえながらエキメキでくるんで食べるのが楽しくて美味しい。石川君はやっとラマダンが明けて、トルコ初の朝食を堪能してました。
 朝食の後、表の玄関の前のポーチに椅子をだしておしゃべりしていると、近所の子供や親せきなど色んな人がやってきては挨拶をしていく。「あけましておめでとう」みたいなノリだ。家の人はキャンディーやチョコなどのお菓子をあげて、レモンの香水のようなものを手にふりかけてあげる。これがどうやらバイラムの日の過ごし方のようだ。玄関のポーチは天井(?)がぶどうの棚になっていて、大きなグリーンのぶどうがいっぱい下がっている。しばらくすると息子さんがはしごをのぼっていくつか切ってくれて、皿に盛られてでてきた。甘い!
 そのうちにいよいよアリさんのお父さんの所の行きましょう、ということになり、みんなで歩いて出かける。村の家々は結構崩れかけた感じのほこりっぽい古い家ばかり。コンクリートの四角いかたまりに窓がついてて、いちじくやざくろの木がたくさん。お父さんの家もやっぱり古くて、村の家だ。家畜の匂いがする。部屋は2階にあり、外階段を上って入ると一人ひとりがていねいに挨拶をかわす。こっちも何人かの人がいるし、家にも何人もの親せきがすでに集まっているので、それぞれがそれぞれと挨拶をするので大変だ。特にアリさんは日本から久しぶりにバイラムに帰ってきたということもあって、みんなから声をかけられていた。わたしたちのまわりにも親せきの人たち子供たちがいっぱい色々話しかけてくれるのだが、英語は全く使えないしアリさんは向こうでおしゃべりしてるし、で、とにかくにこにこしているしかなかった・・・。そしてつぎつぎと新しいお客さんがやってきて、みな親せきなので、アリさんの何番目のお兄さんの娘だの息子だのいとこだのといちいち紹介されるが、アリさんは9人兄弟なのだ。とにかく狭い家は人でごったがえしてしまった。そしてみんなやたらとカメラをもっていて(皆デジカメだった)撮影しあいっこがはじまる。しかしこれもまたお正月的で楽しいのだ。
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お父さんの家、入り口

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アリさんのお父さんとお母さん

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窓辺に座る子供たち

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アリさんは子供たちの人気者でした

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 家の中は絨毯などが敷き詰められていて、入ってすぐの2つの部屋はそれぞれソファー(たぶんベッドも兼用のものではないかと)が1つか2つ置いてある。家具は大してない。みんなソファーには座りきれないので床や窓辺に座る。ここでもだれかが来るたびにバイラムの挨拶とお菓子とレモンの香水がふるまわれるのだが、お菓子や香水を持っていくのは小さい子供たちだった。10歳くらいのかわいい女の子がいて、この子はやたらと気が利いてよく動き回っている。お客にお水のグラスを出したり、グラスが空になるとすぐに注いでくれたりする。小さい子のめんどうもよく見ていて(のちに妹だと判明するが)抱っこしたり遊んでやったり。私たちにも興味しんしんで、くりっとした茶色の訴えかけるようなまなざしでみつめながら色々と質問をしてくる。わたしたちが残念なことに何を言っているのか全くわからずに困っていると、おそらくいろいろと言葉をかえてやさしいいいまわしで聞きなおしたりしてくれる。でも全くわからなくて何ひとつ返事をしてあげれないので情けなくて胸がいっぱいになってしまう。
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 家の外にでると、裏は畑、広がる丘、遠くに山の稜線が続く。どこまでがお父さんの土地なのかは不明なのだが、畑をのぞき、草っぱらで藍子はバッタをつかまえて子供たちと走りまわっている。やぎや牛もいる。蜂の巣箱もある。アリさんがいちじくを木からもいで手渡してくれる。これがなんとまあ甘いこと!甘すぎるくらいに甘い!しかし食べたことのある味だと思ったら、日本でよく食べていた干しいちじくの味だった。たしかあれはトルコ産。干しいちじくが甘いのは干してあるからだと思っていたのだが、生でもすんごく甘いのだ。おいしい山の空気と新鮮な食材、日本にもまだこういう場所はあるが、こういうところに底力があるんだよなあと思う。
 家の中に戻ると男たちは昼の礼拝に行ってしまった。残されたわたしと藍子はトルコ語攻撃をかわすために、お土産用にともってきた折り紙をせっせと折り始めた。しゅりけんを作ってあげると大喜びで、私にも私にもとみんなが集まってくる。よしなんとか言葉を使わずに交流することができたぞ、と思っていると、ルキエとベイザーが来ていて「行きましょう」と朝のお兄さんの家に戻ることになった。(ルキエはちょっぴり日本語が話せるのだ)
 またみんなでてくてくと歩いて帰る。途中モスクがあって、外に村中の男たちが並んでいるのがみえた。お墓もあったのだが、一緒にあるいていた例のかわいい女の子、名前はギョクチェンちゃんというのだが(名前ですら難しいのだ)、彼女がまた何か一生懸命何かを話してくれている。イスラムのお祈りでドュアーといって手のひらを胸の前で上に向けてするお祈りがあるのだが、そのしぐさをしている。もしかすると、お墓の前だからお祈りしてね、と言っているのかな?と思ったら、やはりそうだった。ギョクチェンちゃんはしつけの行き届いた子だなあとまた感心する。家に戻ると女たちは昼食の支度をしていた。
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まきの火のかまどがあり、そこに鍋がかかっていた

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かまどは玄関の外の横にある半分屋外の小屋のようなところにある。家の中にもキッチンがあってそこにもコンロはあった。

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アダナに来てから何度か食べた、薄い皮のようなエキメキ。村の女たち数人で一度に大量に作るのだそう。パリパリになっているので1カ月くらい日持ちがし、食べる時には水を振りかけて少し布にくるんでおいておくと、しっとり布のようになる。

 写真を撮ったり休憩したりしているうちに男たちも戻ってきて、大勢で昼食がはじまる。広い部屋の2か所に大きな布が敷かれてお皿が並べられる。片方は男、片方は女と子供がぐるりと丸くかこんで座る。
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トマトの酸味がきいた白っぽいスープ(ヨーグルトだろうか)にはごはんも少し入っている。ピラフには細かいパスタのようなものが混じっている。羊肉の焼いたものと、肉のトマトスープ煮。サラダ、皮のようなエキメキ。食べ始めると、隣の人がミントを1本渡してくれる。(葉っぱが10枚くらいついているやつ)見ると、隣の人はそれを茎をもってむしゃむしゃ食べている。葉っぱをちぎって3枚くらいをエキメキにのせて、肉と一緒にまいて食べるとすごく美味しい。お肉にはやっぱりハーブだ。みんなけっこう食べるのが速い。男女別の席だったので、話もできないからわたしもついついスピードがあがってなんか必死な感じで食べる。そして食後はチャイ。おしゃべりしたりざくろやいちじくを食べながら午後を過ごす。日本に興味のある少年(14歳)がいて、色々質問してきたり私たちのトルコ会話の本をみて、ローマ字表記の日本語をよんでくれたりする。
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庭からもいできてくれたざくろといちじく

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男たちが午後の礼拝にモスクに行ってしまうと、女たちはスカーフを少しゆるめてくつろぐ。そのうち女だけの礼拝がはじまった。横一列にならんで座り、皆で歌う。簡単な繰り返しのメロディーと歌詞。音程もあるようなないような、キーもばらばらで、不協和音的にハモっているような感じ。かぼそい声がかわいらしい。午後の光の中でのそれはそれは美しいひととき。

礼拝がすんでみんなが戻ってくると、近くのマーケットに行こうという話になる。お正月モードにもちょっと飽きてきたし、何か買い物できるかと思って、「行こう行こう」とさっそく出かける。村の道をみんなでぶらぶらと歩く。左右は広い牧場のようになっていて、夕方近いから放牧がすんだヤギの群れとすれちがったり、すぐ横でいきなり牛がモオーーっとないてびっくりしたり。
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これとすれちがう。

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まきばが広がっているところの横に倉庫のようなものがあり、それがマーケットだった・・・。お菓子やビスケット、バスタ、豆、洗剤などなど、ちょっとしたものをちょっと売ってる店でした。
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これがマーケット。白っぽいヨーカンみたいなお菓子をアリさんのお兄さんが買ってすすめてくれるが、甘すぎてひとくちしか食べれない。しかしみなバクバクと食べている。
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藍子は風船とボールを買ってもらう。一緒にいるのがギョクチェン

 さあ帰りましょう、と歩き始めるが、道々ある家はほとんどがアリさんの親せきの家なので、挨拶して立ち話しているうちにちょっとあがっていきなさいよ、ってことになる。
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村の人。道を歩いていると、みんな見ている。

 結局家に帰るまでの間に3軒くらいの家々であがってはお茶とかフルーツとかをだしていただく。もう食べれません。そのうちの1軒の家は面白い構造をしていた。
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すまいは2階なので外階段をまず上がる。そこがテラスのようになっていて、わたしたちはそこに並べてあるソファーや椅子をすすめてもらったので、そこから撮った写真。おもしろいのはテラス部分が結構広くて、奥の方(写真に写っているところ)に手作り風の木でできた屋根と階段があるところ。さらに3階か?わたしの座っているソファーの隣にはストーブも置いてあり、しかもオーブンつきの構造で、上にはやかんがかけてあってお湯が沸いているし、お母さんは途中でオーブンから天板をとりだして何やら焼いているものをひっくりかえしていた。テラスといっても部屋のようなのだ。家というものはやっぱり自分の暮らしに合わせて作ったり手を入れたり工夫をするということが面白いんだとあらためて思う。

 そんなこんなで寄り道しながらみんなでお父さんの家へ行く。夕食はここで食べるらしく、また大勢の人が集まってくる。アリさんにちょっと来てくださいと言われて奥の部屋に行くと、そこは台所で、5人くらいの女の人が床に座って何か作っている。それに参加させてもらえた。見ると、小麦の生地を薄くうすーくのばして2〜3センチ角くらいにカットしていく人。他の人は手元に小さなボールを置いていて、その小さな生地にボールの中の具材を小指の先でちょっととっては乗せて、端をつまんでピラミッド型に包んで成型している。これは本で見たマントウというトルコ料理ではないか!これはぜひやってみたい!さっそく隣の人に教えてもらって挑戦する。これは楽しい。しかしすごい量の生地を切っている。あんなに成型するのか?みんなはおしゃべりしながらやっているが、わからないわたしは作業が楽しくて夢中で没頭してしまった。気がつくと結構あっという間に終わってしまった。隣の部屋では子供たちも成型作業をしていたらしく、あとで藍子もわたしも作ったよと言っていた。夢中になっていて気付かなかったが、横に壁をまるくきってかまどになっているところがあり、炭火の上に鍋がかけられていて、すでにさっきのマントウが入ったスープができていた。
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壁といいかまどといい鍋といい、日本ではフィクションでしかありえないこの雰囲気(囲炉裏は別として)。しかし日本にはこの手のフィクションが結構あふれているような気がして(レストランとか商業施設にね)、なんかうすっぺらな文化の模倣はやだなあと思ってしまう。特に、子供には本物を見せるべきだ。もしくは、にせものは見せないべきだ。

 子供といえば、ここの子供たちはみんなよく働く。それぞれの年齢でできることを見つけてはちゃんとするべきことをしている。バイラムの来客にお菓子や香水をふるまったり、食事の支度やかたづけ、男の子は水を運んだり(井戸水だったのかな)、小さい子のめんどうをみたり。ルキエやベイザーくらいになるともう大人と一緒でいつも何か次の準備をしていたらしく、その場にいないことが多かった。大きい子が小さい子をおまえも手伝えよって感じで自然に仕事を覚えていく。他にも、子供の一人が日本のお金を見せてというので、石川君が1円玉と5円玉を数枚あげると、トルコのお金とかえようとする。いいよあげる、というとお父さんに見せに行き、お父さんは1枚だけ記念にもらいなさいと言ったので、残りは返してくる。イスラム家庭の子育ては本当に学ぶところが多いです。

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夕食は人数が多いせいもあり、男が先で、それを片づけてから女だけで食べた。マントウはトマトスープにたっぷりはいっていた。(写真は忘れてて食べ始めてから撮った。スープはおかわりもした)ひよこ豆も入っていて、たいそううまい。マントウはやわらかくてトロッと口に入る。名前はなんか中華っぽいんだけど味はイタリアンな感じ。あとサラダと焼き肉、ヨーグルト、エキメキは今日は皮のではなくて膨らんだ大きなパンだった。手伝ったということもあるが、スープが最高に美味しかった。しかしまたすごいスピードで食べる。あんなに手間をかけて作ったのに・・・。食後のチャイと一緒にお菓子がでてきたが、あっさりした和菓子のようなお菓子。一見ココナツかと思ったのは小麦の生地をココナツロングみたいに細長くしてローストしたものなんだそう。しかし甘くてお腹いっぱいであまり食べれず。片付けが終わるとやっとお兄さんの家に戻る。なにしろすごい人だったので、広いお兄さんちは静かでやっとホッとする。めずらしくテレビをつけていて、チャンネルをなんとなくかえていたら、なんとジブリのアニメをやっている。主人公の住んでいる団地の部屋とか町並みをここでみるのは変だ。しかしもう眠い、ベッドでぐっすりと眠る。
posted by おかこ at 2010年03月21日 | トルコ